夢の中で作曲したタルティーニ 2
「わたしが作曲した『悪魔のトリル』は最良の曲だが、あの夢の中で聞いたソナタにははるかに及ばなかった」
・・・タルティーニはそう述懐し、悔やんだそうです。
こういった不思議な話はほかにも残されています。
イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジ(1772~1834)が26歳のとき体験した夢の話も、その一つです。
イングランドの西部の片田舎で読書をしていたコールリッジは、阿片チンキのグラスを飲み干すと、その場でうたた寝をしてしまいました。
このとき夢の中で脈々と流れてきた詩が有名な長詩『クビライ汗』の一節だったという話です。
コールリッジによると、この夢の中で浮んだ詩は、200行ないし300行もあったといいます。
しかし、夢から覚めた彼が実際に書き綴ったのはその4分の1程度で、残りの大半は、これを書きとどめていたときに訪ねてきた来客の出現で忘れ去ってしまったのでした。
イギリスの画家で詩人のウィリアム・ブレイク(1757~1827)も、これと同じような体験をしています。
体験したときの年齢は定かでありませんが、自作の詩集を彫版にしようと思い、割安な方法をあれこれ考えていたとき、死んだ弟が夢に現われ、その方法を教えてくれたというものです。
それは当時としては画期的だった特殊な浮き彫り銅板を使う方法であり、ブレイクはこれによって首尾よく当初の目的を果たせたのでした。