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2010年10月 アーカイブ

眠気のサーカディアンリズム

現代の人工的な文明社会にあっては、生物時計の定型的なはたらきは、時差ぼけやジェットラグの原因として、むしろ厄介視されるはめになってきたのは、たいへん皮肉なことです。


さて、このような事実から、私たちの身体は、昼寝を一回、夜寝を一回しながらほぼ一日の周期で生活するのに適したつくりになっていることがわかります。


・・・言い換えれば、眠気のリズムにはほぼ一定のリズムがあり、そのなかにまたほぼ半日のリズムがあるということになります。


昼食後にすこし眠くなり、夜半にかけてぐっと羽毛 布団で眠くなり、朝になると自然に目が覚めるのは、眠気のリズムが半日の周期で変動しているからです。


すでに記したように、睡眠と覚醒のリズムは、生物に普遍的にみられる活動と休息のリズムから派生してきたものです。


ですから、一日の時刻の影響を強く受けています。


体温リズムは、活動と休息のリズムの典型で、活動的に高く、休息期に低くなります。


これに連動して、起きていやすい時刻と眠っていやすい時刻があることは、あきらかです。


また、リズムのピークによる時刻には、個人差がありますから、朝型(ひばり型)と宵型(ふくろう型)とを区別することができます。

生物時計と睡眠の関係

生物時計の支配については、つぎのような実験からも証明できます。


成人を被験者にして、1日のあいだ15分間隔で、眠くもないのに被験者を羽毛 ふとんのベッドに横たわらせ、むりやり眠らせようとして、どれだけ成功したか、という実験があります。


眠ってしまっても、15分間のうち7分しか眠りは許されないという条件つきです。


・・・すると、深夜の午前零時ごろと昼過ぎの午後零時のあたりに深い眠りが出現します。


被験者を15分間隔でベッドに横たわらせ、眠いのを我慢して、むりやり起きていさせようとして、どれだけ失敗したか、という実験でも、やはり同じ時間帯に深い眠りが出現します。


こんな現象も、あらかじめ人体に組みこまれている睡眠プログラムによって発現するとみなせましょう。


この実験では、さらに、20時から22時をはさんで、眠りやすさが劇的に増加することがわかりました。


また、起きているのがこの時間帯を境にきわめて困難になるのです。


このことから、この時間帯が、いわば覚醒と睡眠とのスイッチの切り換えられる時刻であると考えられます。

リズム障害と眠気

眠気のリズムが生物時計のリズムと密接に関連があることは、自然な条件ではたいへん巧妙に機能するのです。


しかし、特殊な条件ではかならずしも生体に好都合とはかぎりません。


眠気のリズムと社会リズムとの不一致は、時差ぼけにもっともよく現れます。


時差ぼけは生物時計の時刻と外界の時刻とがずれたため、ほんらいの休息期に活動を強いられたり、ほんらいの活動期に休息を強いられたりすることから生ずる現象です。


時差ぼけの問題は、多数の人がジェット機で大陸間旅行をしたり、交替勤務を体験するようになってからたいへん身近かなものとなりました。


いっぽう、自閉症、登校拒否、家庭内暴力など、こどもが社会的にうまく適応できないことも、生物時計と社会時計との非同期現象という観点から理解できるといわれます。


さらに、病気としての睡眠と覚醒のリズム障害は、生物時計が自然環境あるいは社会機構の日周リズムに同期できないことから生じるもので、いわば慢性の時差ぼけです。


睡眠相遅延症候群と呼ばれる疾患がそれで、羽毛 フトンでの入眠も起床もたいへんむずかしくなります。


体内時計のリズムが独走(フリーラン)して、社会時計に同調しないので、そのずれからいろいろな摩擦を生じ、社会に適応できなくなるのです。

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